ダイゴローのうたた寝

いろいろチャレンジしているオヤジのブログ

トランペットの演奏に関する戯言(その3)

<その2からつづき>

トランペットの吹き方について、大きくは「吹き方」と「楽器」に大きく区分して考えてみようと思います。

「吹き方」は、いわゆる「外側」と「内側」に分け、特に見えない「内側」がどうなっているのか・・について重点的に考えます。

「楽器」は、演奏するうえで大事な相棒である楽器について、特に音を発する源ともいえるマウスピースを中心に、その特性・構造がどのように演奏に影響するのか・・を考えてみます。

 

 

吹き方編 

1. 外側
(1)姿勢
 何よりも大事とされる姿勢ですが、トランペットを吹くうえで最も重要な息を確保するためにも、身体の各組織・器官が効率よくかつ負担なく呼吸ができる体制でなければならないと考えます。
ハイノートを演奏するジャズプレーヤーが、顔を真っ赤にして猫背になり楽器を下に向けて頑張っている姿を見ることもありますが、それでも効率よく演奏できるなら良いと思いますし、直立不動の姿勢が必ずしも良いとは言えない時もあると思います。

歌の場合、顔だけを真下に向ければ気道が狭くなって歌えませんし、逆に顔を上向きにして気道を真っ直ぐにし過ぎても歌うことが難しくなります。
例えばオペラやミュージカルの歌手の方はいろいろな姿勢で歌わざるを得ない場合がありますが、どんな姿勢でも息の流れに支障が出ないよう、特に上半身は、一定の形が崩れないよう注意しながら歌っているのが分かります。

 トランペットの演奏も同じだと考えており、例えば、マーチングなどで楽器の向きが上下左右に激しく動いても、気道だけは確保するよう皆さん工夫していると思いますし、そうしなければ、演奏不可能になってしまいます。

特に初心者や、小学生などで楽器が重くて持つのが辛い場合などは、演奏が長時間になると疲れてしまい、知らず知らずのうちに姿勢が崩れてしまうことも多いので要注意ですね。

経験者でも、調子が悪いと、それをなんとかしようとして姿勢が崩れ、ますます奈落の底に落ちていくこともあります。(私も良く経験しています。)

 

自分にとって効率の良い姿勢を見つけるには、楽器を吹いてみるのも良いですが、楽に歌を歌ってみて、一番楽に声が出る姿勢(言葉の発音にも気をつける)を探すのも良いと思います。

調子が悪くなったら原点である姿勢をチェックする・・ということを忘れてはいけないと思います。(後で述べる耐久性にも関係してきます。)

 

 

(2)楽器の向き

 上記の「姿勢」とも関係しますが、楽器の向きに関しても、いろいろ言われています。

  ア 水平が良い。
  イ 自然に斜め下向きが良い。
  ウ ハイノートのためには上向きが良い。

  姿勢や楽器との接触点(アンブシュア)がどうなっているかを無視して楽器の向きだけを指定する・・又は気にするのは良くないと思います。

いわば、楽器の向きは、「姿勢」と「マウスピース・唇の関係」の「結果」だと考えます。

「結果」ですので、それのみを捉えてどうこう言うことは誤っていると思いますが、「なぜそうなったか」を考えるためのヒントにはなると思います。

プロの方の演奏形態を見ても、真っ直ぐに楽器を構えている方も居れば、まるでクラリネットのように下向きに構えている方もおります。でも、どちらもすばらしい音で演奏します。

トランペットという楽器が、マウスピースと歯の間に唇を挟んで音を出す構造である以上、上下の歯の(前後の)段差が当てたマウスピースの向きを決め、その結果、接続されたトランペット本体の向きも決まってしまう・・と考えるのが、自然だと思います。(後述しますが、楽器の向きに影響する要素は他にもいろいろあります。)

したがって、演奏者個々人によって向きがバラバラなのは自然であり、それのみを無理に矯正することは、他に与える影響の方が大きいので、慎重に行った方が良いと思います。
もし楽器の向きを変える又は揃えたいなら、単に楽器の向きに着目するのではなく、下顎の使い方やマウスピースを当てる位置などが正しいかどうかを先にチェックする必要があります。

 

(3)唇の形

 まず「アンブシュア」について。

アンブシュア」とは一般的に「楽器を吹くときの口の形及びその機能」とされており、具体的には「唇の形」と思われがちですが、唇以外に、歯や舌、さらに咽喉などがトータルで機能する状態だとされています。

最初は、外側から見える「唇の形」に限定して考えてみたいと思います。(口の中は後述)

唇は、どのようにするのか・・についてもいろいろな考えがあります。

  ア 猿のように突き出す。
  イ 唇の両端をそれぞれ横に引っ張る。
  ウ 少し微笑んだ形にする。
  エ 唇の赤い部分を少し巻き込む。
  オ 唇の赤い部分だけで吹く。

「 ア」は、その昔、ある有名なエチュードの中で紹介されていた形で、現在でも推奨する演奏者がおります。

「イ」は、その逆で、実際の演奏者の中でも唇の両端をキッと結んだような吹き方をされている方を良く見ます。

「ウ」は、私が最初に学んだ教則本で述べられていたもので、万人向けかと思われますが、私の場合、自分では微笑んだ形にしているつもりでも、鏡や写真で見ると口角が上がっておらず、逆にやや下がっているのが実態です。私の友人のトランペッターはきちんと口角が上がっていますが、私はそれができないようです。

「エ」は、明らかに唇を巻き込んで吹いているのが分かる演奏者も多々おります。特に唇の厚い演奏者に多いのかもしれません。私の後輩で、唇の赤い部分が全く見えなくなるくらい極端に巻き込んで高い音をピーピー出している者がいましたが、結局、曲が吹けず楽器を辞めました。極端なのは良くないようです。

「オ」は、「エ」の逆で、「ア」と似ているようで少し違います。初心者などに良く見られる吹き方で、とにかく音を出す・・という時にはこの形になり易いようです。あるプロによると「粘膜奏法」と呼ぶらしいです。唇の内側は柔らかい粘膜になっており、振動しやすいので、ついそこで吹いてしまう現象です。音が出やすい一方で融通が利かず、すぐにバテてしまいます。

 どれが自分にふさわしい形なのかは、指導者にもよりますが、試行錯誤はやむを得ないと思います。

 

(4)マウスピースをあてる位置

マウスピースを唇のどこに当てるか・・は、いろいろな意見があり、初心者の方は、悩まされると思います。

まず上下の位置に関しては、大きく分類すると、以下のような考え方があります。

 

ア マウスピースのカップの上1/3を上唇に当てる。

イ マウスピースのカップの上2/3を上唇に当てる。

ウ マウスピースのカップの1/2を上唇(下唇)に当てる。

エ 通常の音域では上記「イ」又は「ウ」で演奏し、ハイノートは上記「ア」に切り替える。

 

個々人により唇の形や吹き込む息の方向が違いますので、これが正解ということはありませんが、分からない場合は、「ウ」が良いと考えます。

私も、いろいろ試していく中で、一時、「エ」で吹いていた時期がありましたが、奏法を見直した結果、非常に吹きにくくなったため「ウ」に戻した経緯があります。

「エ」は、超高音域を奏する時に使われる手法ですが、切り替えに練習が必要になります。

一般的に、ハイノートを要求されるジャズ、ポップスの奏者は、「ア」又は「エ」を推奨する傾向が強いようです。

プロの方の口元を見ていると、上記の「ア」〜「ウ」のどれに相当するかが分かる時がありますので、良く見て参考にすると良いでしょう。

 

次に、あてる位置が左右どちらかにずれる場合はどうでしょうか。

唇にあてたマウスピースが真ん中(鼻の頂点の真下)が当然だと思われがちですが、実際は、左右どちらかに寄っている奏者が多いです。
左右の位置は、歯の並び方などに影響されることが多く、一番心地よい場所を探したら中央から外れた・・というのがケースが多いと思います。

私の場合、一番最初に担当した楽器がユーフォニウムだったこともあり、中央よりわずかに右寄りにあてると一番心地よく吹けます。
身体的にも、中央で吹くと上唇の真ん中の膨らみが邪魔をして吹きにくい場合があり、さらにマウスピースを支える上の前歯2本の真ん中が顔の真ん中よりもわずかに右にあるので、最初は真ん中で吹いていても、疲れてくると、吹きやすい右へずれてくる・・というのが実情です。

「真ん中で吹きなさい」と指導される方もいますが、あまりこだわらない方が良いと考えます。
まずは鏡で自分の顔の中心線を確認したあとで、歯や唇の状態を見て、自分にとって一番吹きやすい(呼気をコントロールしやすい)場所を探すことが重要です。

 

(5)マウスピースの圧力

 マウスピースをどのくらいの圧力で唇に接するか・・は、バテ対策やいろいろな奏法への対応にも関連しています。

強く押しつけて演奏すると以下のような弊害が考えられます。

 

ア 唇の周りの筋肉が硬直し、舌の動きにも影響するので、インターバルが困難になる。
イ マウスピースと歯の間に挟まれた唇の血流が悪くなり、すぐにバテてしまう。
ウ 結果、音が暗くこもるなど、演奏が困難になる。

 

一つの例として、トランペットを上から紐でつるし、そのままマウスピースに唇をつけて演奏できるくらい、接する圧力は小さくしなければならない・・というものがあります。
紐でつるしたものを手で触らずに演奏するというのは極端な例だとしても、上記の強く押しつけた場合の弊害を考えると、マウスピースを当てる時の圧力は極力小さい方が良いと思います。

しかし、例えば、ハイノートなどを吹くときや大音量で吹くときは、かなりの圧力の呼気が唇の一点に集中します。
その場合、当て方が弱すぎると、ビービーと呼気が漏れてしまい、演奏できません。
やはり、適度な圧力が必要で、ほとんどのプロ奏者も唇にうっすらと跡が付くくらいの圧力をかけているのが実態で現実的だと思います。
バテ防止のためにも、休符がある時は唇からマウスピースを離したり、楽に吹ける音域の時は圧力を軽減させるなど、演奏中もきめ細かく気をつけることが必要です。

 

 <その4へつづく>